Gallery & Works
鮨 日々是好日
(すし にちにちこれこうじつ)
「地域文脈の動的更新 ~ 路地を内包する寿司屋」

計画地は、江戸期の城下町を起源とし、遊郭からスナック街へと形を変えてきた新潟県五泉市の中心部「馬場」地区です。
本プロジェクトは、この歓楽街に佇む、歴史的価値を持たない古い木造民家を寿司屋へと再生する試みです。
現在の馬場は、夜にわずかな活気を見せるものの、全体としては衰退が進み、どこか懐かしい雰囲気が漂う地域となっています。
私たちはまず、閉鎖的になりがちな街並みに対して建築をひらくため、「減築」という手法を選択しました。あえて建物の容積を削り、道路から建物をセットバックすることで、道沿いに「余白」をつくっています。これは単なる空地ではなく、衰退しつつある街並みに対して「新たな路地への入口」となるような、人々が集う“たまり空間”としての効果を狙ったものです。

入口から屋内へと続くアプローチには、自然石と植栽を点在させ、道路の延長線上にある新たな「路地」のような気配をつくりました。外の歓楽街の喧騒を少しずつ忘れさせ、これからの食の体験への期待感を高める演出です。空間構成は、その路地に沿うように、潔くカウンター席(8席)のみを配置しています。

内部空間では、一見価値がないように思える既存の柱や梁、欄間をあえて露出させ、かつての民家が重ねてきた「時間の堆積」を残しました。それに対し、大将の舞台となるカウンター周辺は、禅的な静謐さを漂わせるモノクロの色彩で構成しています。無駄な要素を排したストイックな空間にすることで、主役である鮮やかな寿司ネタが美しく浮かび上がる視覚効果を狙いました。

また、店名は表に出さず、寿司ネタをモチーフとしたアイコン(軒先サイン)のみを表示しています。これは、かつてこの地が織物や遊郭で栄えた時代に掲げられていたであろう「髪結」や「小料理」、「酒」といった、直感的で土着的な看板のあり方を現代的に解釈・再現する試みであり、古い街並みへのささやかな応答です。



私たちはこれまで、五泉市内において、五泉ニット産業の複合施設「LOOP&LOOP」をはじめニット関連施設のショップ設計や一棟貸しの宿泊施設「SET10宿(セッテンヤド)」の設計・運営などに係わってきました。これらは単一の建築を完結させる手法ではなく、リノベーション・コンバージョンを通じて地域の固有性を都市へ染み出させ、街全体の文脈をじわじわと書き換えていく動的な試みと捉えています。
少しずつ寂しさを増していく地方都市において、リノベーションに係わり続けることは、街に新たな関係性を生み出すきっかけになる。私たちは、この建築が未来の街を面白くする、持続的な地域活動の一環であると位置づけています


















