Gallery & Works
The Knit Bar
Facade
Approach
Shop
Sample room
Before
Before 1階平面図
After 1階平面図
創業60年を超えるニット工場の改修計画です。
工場内の作業室・打合室・倉庫・事務室・玄関などを改修し、ショップやニット素材のサンプル室、フォトスタジオなどの機能を追加しました。工場は稼働させながら改修し、工事中の社員と来客の動線、製品の製造・出荷の動線を確保しながら施工するという条件のもと、4工区3期の工事に分けて5か月の工事期間で完成する計画としました。
《ショップ》
創業から60年以上もこの地でニットを作り続けてきた企業が、自分達の商品をこの場所で直接販売するという試みは、新たにシンボリックな空間をつくって販売するのではなく、地域に根差してきた既存の建物を活かした空間をつくり、企業の歴史を踏まえたストーリーとともに商品を販売する事に意味があるように思えました。
仕上げ材を少し解体してみると、築50年以上経過したRCの構造躯体は、型枠に野地板のような物を使用していたり、スラブは区画ごとに高さが違ったり、年代によって室の用途が変わっていった痕跡が地層のように残っていたり、構造物として哀愁があり、遺跡のように見えてきました。外観は塗装され、きちっとメンテナンスされているため古さを感じないけど、建物には創業60年の歴史が刻まれていました。既存の躯体に対して、商品の背景だけサラッと白に塗ったような、デザインの痕跡をなるべく残さないという方針で空間をつくっていくことにしました。
工場への材料の搬入、完成した商品の出荷、社員の出退勤の動線、関連企業の来客用の動線と、物と人の動線が複雑に交差する中で新たにショップへの来客用の動線を確保する必要がありました。既存の物・人の動線と、新たな動線を明確に分けるために敷地内にショップ用の前庭をつくり、ショップの入口が来客に認識してもらいやすいようにしました。また、新たにつくった前庭にはテラススペースを併設し、イベント時に屋外販売ができるようにしました。ペット用の商品も扱うため、テラスへはスロープの別ルートを用意し、ペットのトイレスペースも併設しました。
内部は、打合せ室や倉庫だった空間の間仕切り壁を撤去して商品の販売スペースをつくりました。既存の構造躯体に対して確保できる販売スペースは、縦長の形状となったため、70㎝角の白い可動する箱を何台か商品陳列用什器として製作し、陳列商品によっては合体して大きな机になったり、それぞれ独立して点在させたり、限られた空間で自由にレイアウトができるようになっています。
商品を中心にお客様とbarで語らうような時間を過ごすことができるように、細長い空間の中央部には、もともと物入だった空間を利用してキッチンを配置しました。
《サンプル室》
大量の生地サンプルをインデックスしながら展示するための空間です。生地を効率よくインデックスしながら空間の間仕切りとしても利用できるスリット状の格子を背板にする什器を製作し、大量の生地サンプルによる威圧感を軽減し、見る角度によって壁の透過度変わるようにすることで空間に軽やかさが出るよう計画しています。