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竣工:2021年
用途:住宅
建設地:新潟市東区
木造:新築
設計・監理:塚野建築設計事務所
施工:サイトウ建築設計室
写真:鈴木亮平(DailyLivesNiigata)
「可変する1.8mの軒下」
地方の主要駅より2kmくらいに位置し、木造住宅やアパートが立ち並ぶ場所に、
夫婦と子供3人の5人が暮らす木造住宅を計画しました。
この場所は昭和30年以降に住宅地として急速に発展した地域で、古い建物が多いけれど利便性が良いことから
土地が空くと新しい住宅やアパートが建ち、街はゆるやかに新陳代謝しています。
土地の所有者が変わる際に土地を分筆して細かく分けてから売りに出されるためか、
道路に対して宅地の間口が狭い家が多くなり、道を歩いてみると駐車場や家の外壁が道路に迫っています。
稀に残っている既存の大きな宅地は、道路から離れて家が建ち、庭が道路に面しているので少しほっとします。
計画敷地も分筆された約幅10m×奥行35mの細長い土地です。
出典:googlemap
細長い敷地ですが住宅を1つ建てるには十分な面積です。
家を建てる事により敷地が南北に分断されないようにし、余白の土地を活用する可能性を残した計画として、
土地がどんどん細長く分筆されていくこの街の、家の立ち方を考え直したいと思いました。
新たに計画する建物を中心に可変する可能性を残して、
この建築が家族の成長と街の新陳代謝に適応しながら豊かな場所であり続けたら、
少しずつ街並みが変わっていくかなと期待して、
大人になった子供たちが離れを増築して2世帯、3世帯住宅にしたり、
歳を重ねて時間に余裕ができたご夫婦があずま屋を建てたりできる配置計画としました。
建物は敷地の幅いっぱいに、タープを張るように屋根を掛け、南北の土地のつながりを分断しないように
生活に必要な要素を配置し基本形としました。
南北がつながる部分の屋根を柱で支持すると可変する際に制約となるので
屋根は基本形のボリュームから跳ね出す構造としました。
現段階では、夫婦と子供三人が暮らすため基本形のボリュームに出入口と、
通り土間、ワークスペースをプラスした状態としています。
プラスした要素は基本形とは構造的に分離され基本形単体で積雪1m・耐震等級3を満たすようになっています。
また、プラスした要素の上部には1.8mの屋根がかかっているので軒下は容易に可変させることができます。
敷地奥に増築するときにはプラスした部分を切り離して屋根のかかった半外空間にしたり、
新たな用途のための空間に更新することができます。
この建築が、時を経ながら基本形部分を中心に、建築が大きくなったり小さくなったり、外とつながったり、
どんどん変化しながら家族と街に寄り添っていく姿を見るのが楽しみです。